こんにちわ。紅蓮です。
夏になると、旅行をする人も増えて来るものですが、そんな時には、必ずついて回るものがあります。それは、幽霊のお話です。
というのも旅行というのは、日常を忘れるためにするもので、ある意味非日常を感じるために行くものともいえるものです。今回はそんな旅行に関するちょっと怖い不思議なお話です。
僕には7つ上に姉がいて、両親と姉と僕の4人家族で生活しています。もう今はお亡くなりになりましたが、祖母も近くに住んでいたこともあり、毎年お盆の頃には、家族と祖母の5人で、同じ場所に旅行に行くのが、恒例となっていました。
そんな小学3年生の夏休みのこと。その年もまた5人での旅行をたのしもうと、1週間ほど旅行に行くことになりました。
旅行地は、W県の山側で、近くにきれいな小川が流れており、ちょっと歩くと海が見えてくるそんな町でした。
山側に行くとクワガタやカブトムシが取り放題。地方都市育ちの僕にとっては、ゲームよりも楽しい遊び場でした。
旅館のはす向かいには、木造の古く大きな小学校があり、夏休み期間中は、その小学校の生徒や先生が、毎朝校庭でラジオ体操が開催されています。
地方都市ではラジオ体操自体が珍しく、いくのにも面倒くささを感じていましたが、何回か参加すると、顔見知りの友達ができ、駄菓子がもらえるのが、ちょっとした楽しみにもなりました。
そんなラジオ体操が、5回目を迎えた時のことです。
その日は、いつも参加している人が少なく、5~6人だったと思います。それと先生が数人と、近所のおじいちゃんたちが3人くらいが参加していました。
ふと気づくと校庭の片隅にある大きな切り株にポツンと1人、座りながらこちらを見ている男の子がいることに気が付きました。
ラジオ体操に参加するでもなく、切り株に座ったまま、じーっとこっちを見ています。「何をしてるのかな」と思いながらも体操を終えて、駄菓子を受け取り、旅館の方に帰ろうとすると、その男の子がまだ、座っている。
なんか可愛そうに見えてきちゃった僕は、自分から話しかけました。
「ぼく・・・ 紅蓮。・・・ 関西から来たんだ・・・ 」
すると男の子はうつむいたまま、目も合わせずに、こう言いました。
「オレ・・・ ユースケ! 話しかけてくれて、ありがとう!」
その姿を見た僕は、「暗いやつだな」と思ったんですが、立ち上がった時にタンクトップに紺色の短パンを履いたユースケ君の手足に、アオタンがあるのを発見しました。
年のころは僕より少し背が高かったので、同い年か、1つくらい年上くらいかなと思いました。
「ケガしてるじゃん、一緒に旅館に行こうよ」と僕が言うと、彼は困った顔をしながらついてきました。
一通り手当が終わり話を聞いた後、一緒に遊びました。
ユースケ君の通っている学校の校庭で遊具で遊んだり、森に分け入ってカブトムシを捕ったり、海水浴をしたりしました。
でも気になることが一つだけあったんです。それは彼がラジオ体操には参加せず、必ず切り株に座って見ていること。そして僕が声をかけると、立ち上がり、夕方暗くなる頃まで一緒に遊び回っていることです。
楽しい時間は、あっという間に過ぎて、帰る日のその朝、僕は大変なことに気付きました。ユースケ君と遊んだ時、翌日に帰ることを彼に言いそびれていた僕は、その日の朝もラジオ体操に参加して、その時に言おうと思っていました。
ところが、渋滞を避けるため、朝早めに帰路に着こうということになり、結局最後のラジオ体操にはいけずじまいでした。
僕は彼にお別れをいうことも出来ず、そのまま車に乗って、帰路につきました。
そんな切ない思い出から1年が経ち、小学4年生の夏休みもまた旅行に行くことになりました。
旅行に行くのは楽しみでしたが、どこかにユースケ君がいるのではないかという気持ちで、眠れないでいました。
今年もラジオ体操があることを確認して、明日の朝、必ず起こしてもらえるよう、両親に何度もお願いしました。
翌朝、期待に胸を躍らせながら小学校に行くと、ユースケ君の姿はどこにもありません。
沈む気持ちを隠すことが出来ず、ラジオ体操を終え、お菓子の列に並んでいる時、ふとあの切り株の方を見ると、なんとユースケ君が座っているのが見えました。
僕は嬉しさのあまり、お菓子をもらうのも忘れて、ユースケ君の方にはしりました。
彼の元まで駆け寄った僕は、うれしさと緊張のあまりに息を切らせて、問いかけてみました。
「ユースケ君! 僕、紅蓮。 覚えてる?」
「紅蓮君! 久しぶりだね! 覚えてるよ」
そう言って立ち上がったユースケ君は、小さく見えました。
1年ぶりに再会した2人は、あっていなかった1年の月日などなかったかのように、旅行中の7日間、毎日会って遊びました。
その年の冬休みのことです。父がたの祖父が調子が悪いということで、年が明けたらすぐに、祖父の家に行こうということになりました。
僕は祖父に会えるのも楽しみでしたが、病気だしなと思って家に向かいました。
夏場ほどの渋滞もなく、スムーズに祖父の家にたどり着くと、僕はすぐに祖父にききました。
「ねぇ、じいちゃん。大丈夫?」祖父は僕にこう言いました。「おお、紅蓮。友だちもつれてきてくれたのかい」僕はその時にちょっとびっくりして、聞き返しました。
「じいちゃん、何言ってるの?家族できたから、今日は僕たちだけだよ。」
すると、祖父は僕の右横を差し、「そこにお前と同じくらいの子がいるよ、友達じゃないのかい」といいました。
僕は祖父にその子の風貌を聞いて、驚きました。それはあのユースケ君の容姿と酷似していたからです。
しかも服装は冬なのに、着ている服装は、真夏のラジオ体操の時、彼が着ていた白いタンクトップに紺色の短パンと、全く同じ服装です。
薄っすらと雪が積もる真冬のこの時期に、どう考えても不釣り合いです。
「そう言えばユースケ君、去年も、おととしもあの格好だったな・・・」
その体つきは、初めて出会った2年半前から、全く変わっていないようです。
改めて思い出すと、初めて出会った時のショウジ君と翌年の彼は、背格好が同じで、全く成長していません。
その時に気づきました。彼がこの世のものではないことに…。何だか急に怖くなった僕は、両親に帰ろうといい、家まで走って帰りました。
家に帰るまでの間、彼の初めて出会った時の言葉が耳についてはなれませんでした。
「気付いてくれてありがとう」
あれは・・・ きっと誰にも気づいてもらえなくて、僕が気づいたからだったのでしょうか。
後日談として、僕はこの話を調べてみると、ラジオ体操をしていた学校は閉鎖的な学校で、転校してきた子供をなかなか受け入れないということで、いじめのようなこともあったといわれていることがわかりました。
そして、彼もその一人であることがわかりました。
その翌年には、祖母もなくなりその地に旅行することはなくなったので、そのあとのことはわかりませんが、彼はまだあの地に一人でずっといるのでしょうか。
そう考えると怖いながらも、かわいそうな気持ちになってしまいます。
いかがでしたか?今回は旅行にまつわる非日常がもたらす怖いお話でしたが、旅行していた時には、こういうことって結構あったりします。
もしかしたら、あなたの隣にも霊といえる存在がいるかもしれません。気を付けてみてみるとよいでしょう。
ではまた次の記事でお会いしましょう。