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【実話怪談②】超高額バイト【高い裏に隠された対価とは】

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近年の情報化はすごいものがありまして、SNSでも欲しい情報がすぐに手に入ります。
「仕事探し」もその一つです。

 

僕も学生時代はアルバイト探しの時には、ネットでお世話になったことがあります。単価の高いアルバイトにつきたいもので、検索すると時給のいいものや単価の高いものが色々出てきます。

 

今回は、そんなアルバイトの怖いお話です。

 

この話は、僕がアルバイトをしていたコンビニで、一緒だった学生のY君から聞いたお話です。

 

ある日、僕はコンビニでレジ打ちをしながら、もう一人のシフトの相棒になっているY君を待っていました。

 

シフトの時間になっても来ないY君。出勤時間を10分くらい過ぎて、電話がかかってきました。見てみると、彼だったんです。

 

出てみると、彼は僕にこういいました。「日当でいい仕事が見つかって、今そのバイト先なんです。留守番のバイト。」

 

彼の声はイキイキしています。気になった僕は、話を聞きます。

「で?時給はいくらなん?」

「日当5万です」

 

日当5万円といえば、相当高額のバイトです。
怪しいバイトに間違いありません。

 

彼はネットで、以下の広告をみたそうです。

お留守番するだけ!
200X年7月16日13時~7月20日12時まで
日当5万円 × 正味4日間
最終日に支払で、合計12万円GET!!
遠方でも、交通費全額支給!!
早いもの勝ち!!
連絡先:090-XXXX-XXXX(担当:ヤマグチ)

それを見つけた彼は、お金欲しさに飛びつき、担当者に連絡を入れたそうです。

 

「すみません。求人をネットで見たんですけど。まだ仕事ありますか?」
すると、担当者のヤマグチという男は、暗い感じの口調で言いました。

 

「あ、大丈夫ですよ! じゃあ、16日の昼12時に、〇〇駅の改札出たとこに来てください。時間厳守でお願いします!」

「わかりました」

 

Y君は自分の名前と連絡先だけ伝えて、当日になるのをうきうきとしながら待っていたそうです。

 

そんなこんなで当日を迎え、ちょっと早めに家を出て、待ち合わせの場所へ向かったY君。現地へ向かう電車の中で、担当者のヤマグチと名乗る男から電話で聞いた仕事内容のメモを読み返しました。

  • 16日13時から20日12時まで、24時間×4日間、泊まりで留守番するだけのお仕事。
  • 留守番中は一切外出はしないこと
  • 食料品や飲み物は、まとめて買っておくこと
  • 冷蔵庫、トイレ、お風呂場は使用可能
  • 給料は最終日にまとめて現金払い
  • 最後までやりきらないとバイト代は払わない

何度読み返してみても、どこも難しい仕事の要素はなく、小学生でもできる内容です。彼は、「こんなこと失敗するはずがない」と高をくくっていたといいます。


そんな彼も、「でも日当5万円って高すぎないか・・・なんか、やっぱヤバい仕事なのかな・・・」と一抹の不安を感じていました。そんなことをぼんやり考えていると、待ち合わせの駅に到着したそうです。

 

「でもなあ、お金もないし・・・かといって逃げたくもないし・・・腹決めよう」

と電車から降りたそうです。改札へ向かうと、いかにもサラリーマン風の服装の男が、携帯を見ながら待っていました。

その風貌は明らかに、サラリーマンと違う雰囲気だったそうですが、そこに触れずに、

「あの・・・ヤマグチさんですか?」

「おお! えっと・・・Yさん? 待ってましたよー!」

ヤマグチと名乗る男が笑いながら、答えました。

 

その場で仕事内容の確認を済ませると、ヤマグチと名乗る男は汚い手書きの地図とキーケース、それとグレーのキャリーバッグを渡してきました。

 

渡されたキーケースから、番号が振ってある鍵が、ジャラっと音を立てて出てきました。

 

ヤマグチと名乗る男は、その鍵を指差して、

「一番上から1番で、一番下が4番です。留守番中、鍵はすべて、かけてください。」

彼はわけが分からないながらも、今までの心配事が晴れたような思いで、少し安心しました。

 

普通の家に、4つも鍵が付いているはずがありませんからね。

 

その家の中には、何か高価な代物があって、盗まれないように、留守番のバイトを雇っているのだと納得してしまったそうです。

 

「細かいことはそのキャリーバッグの中の紙に書いてあるので、読んでください。では!」
と矢継ぎ早に言い残して、ヤマグチは足早にその場を去っていったそうです。

 

一人残されたY君は、地図を頼りにキャリーバッグを引きながら駅から10分ほど歩いた場所にある家に向かいました。

 

比較的新しい町並みの中で、その家は生い茂る雑草に囲まれ、まるでお化け屋敷のような佇まいで、見るからに周りから浮いた存在でした。特に一番違和感を持ったのは、玄関の入り口のドアです。

 

廃墟のような古びた木造平屋の家には、不釣り合いなほどの灰色の金属製のドアが付いていたのです。そのドアには、上から下まで、縦一列に4つの鍵が付いていました。

 

全身で怯えを感じながら彼は、ドアの前に立ち、1番上の鍵を開けると

「ガチャコンッ!」
という、鈍い金属音が響きます。

 

「こええ」と恐怖に思いながらも、2番目、3番目・・・一番下の4番目の鍵を開けて、ドアノブを回して手前に引くと、「ギギギーッ」と嫌な音とともに、湿ったカビ臭い、重い空気が家の中から溢れ出しました。

 

「おいおい、こんな家に留守番するのかよ。マジか?気持ち悪りぃな・・・」そう言いながら、家に上がると、彼はルームツアーを始めます。

 

部屋は3DK、玄関から10m程の短い廊下があり、その左右に部屋があるタイプです。

 

1つ目の部屋に入ろうと、ドアの少しヒビの入ったくもりガラスの引き戸を開けると、更に重く異様な空気が、まるでYくんに「来るな」と言わんばかりに押し返すような空気が足元から湧き上がってきました。

 

「カビくせぇ・・・何だよこの家・・・」8畳ほどの和室の真ん中には、小さなテーブルがポツンと1つあり、奥の床の間には冷蔵庫がありました。

 

彼は、途中のコンビニで買ってきた飲み物と食料を空の冷蔵庫に入れ、その隣のドアを開けてみると、お世辞にもキレイとは言えないトイレがありました。

 

「部屋から直接トイレかよ・・・まあ仕方ねえな。」

キャリーバッグから仕事のルールを書いた紙切れを取り出し、確認しようとしました。

 

しかし、その日は天気も良く、昼過ぎだと言うのに、電気を点けなければ字が読めないほどの暗さです。

 

この仕事のその他のルールは、以下のようなものでした。

  • 玄関の左右の盛り塩は、毎朝新しいものに替えること
  • 誰かが訪ねてきても、絶対に出ないこと
  • もし、誰かが訪ねてきたら、ドアを開けずに玄関の内側から『お帰りください』と3回言うこと
  • 鍵は常時4つとも閉めておくこと

「左右の盛り塩なんて、あったかな?」
彼は、玄関の鍵を閉め忘れていたので、盛り塩を確認しました。

 

「コレか・・・盛り塩なんて、変えなくてもバレないかな」

 

鍵を全部閉め、部屋に戻り、隅に置かれている少し湿って重くなった布団を広げ、その上に横になり、携帯で暇をつぶしながら、ただひたすら時間が過ぎるのを待ちました。

 

「はぁ・・・ ここなら漫画喫茶の方が快適だな」

暇を持て余している内に、いつの間にかウトウト居眠りをしていると、夜9時を回った頃、突然「ガチャコンッ!」と、大きな金属音がしたかと思うと、玄関のドアノブを「ガチャガチャ!」と、誰かが玄関を開けようとする音が聞こえてきました。

 

「え?なになに?」
驚いたY君。恐る恐る顔だけ出して、ドアの横のくもりガラスから外の様子をみようとします。

 

女性と思われる人影が立っていて、ドアノブを激しく回して、開けようとしているようなのです。

 

その音の雰囲気だけで、相当怒っていて、「今すぐに、このドアを開けろ!」と言う意思が伝わってくるようでした。

 

「なんなんだよ。」そう思ったとき、彼はメモに書いてあることを思い出しました。

「誰か来たら、おかえりくださいと3回言う。」彼は3回唱えました。「お帰りください! お帰りください! お帰りください!」

 

でもいくら言っても、物凄い勢いでドアノブをガチャガチャと、狂ったように回し続けます。

 

怖くなった彼は、そのまま部屋へ戻り、頭から布団をかぶって、音が鳴りやむのを待つしかなかったそうです。

 

そうしている間もずっとドアノブは回され、音がやんだのは朝5時くらい。

「何だったんだろう?」

そう思いながら、恐る恐る玄関に出てドアを見た時、一番上の鍵が1つだけ開いている事に気付きました。

 

「最初の『ガチャコンッ!』って音は、鍵を開ける音だったんだ」

そして、ふと玄関の盛り塩を見ると、左右ともぐっしょりと濡れて、溶けたように崩れていました。

 

「おわ、なんじゃこれ」

とはいえ、怖いからと言って逃げ出すこともできない彼は、盛り塩をキャリーバッグの中にあった塩で指示書通りにきれいに作り直し、ドアの両脇に置き、また長い1日を始めるしかなかったといいます。

 

敷きっぱなしの布団の上でゴロゴロとスマホを触りながら、昨晩の出来事でほとんど眠れなかった彼は、ウトウトとしてしまい、空腹とともに目が覚めたらしいです。

 

持って来たインスタントラーメンをすすり、ぬるいシャワーを浴びて部屋に戻った時のことです。

「ガチャコンッ! ガチャコンッ!」
と金属音がして、またドアノブを「ガチャガチャ!」と荒々しく開けようとする音が聞こえて来ました。

 

「何なんだよ!!間違ってるよ。ここおれの家だよ。」と言ってはみたものの、聞いてくれる相手ではありません。

 

その日も音が鳴りやむのを、布団をかぶってじっと待つしかありませんでした。すると、玄関の外から、叫び声が聞こえました。

「グォォォォォォォォォォォォォッ!!」

 

空が明るくなる頃まで、ずっと開けようとする行為を繰り返し、彼は眠れない夜を過ごしたのだそうです。

 

翌朝になり、彼はまた玄関を確認したそうです。すると、また盛り塩は溶け、今度は鍵が2つ、開けられていました。

 

彼はその時に、一つの覚悟をきめたそうです。

「1日待って、一つ増えているなら逃げよう」

 

そしてその晩同じことがあり、怖さと戦いながら、辛うじて我慢した彼、玄関を確認すると、今度は鍵が3つ開けられていることにきづきます。これをみて彼は、青ざめたそうです。

 

というのも、玄関ドアには、鍵が4つついています。毎晩1つずつ開けられていく鍵。つまり、次もしあの女が来た時、カギを全部開けてドアから中に入ってきてしまうと言う事です!


「やばい、こうしてはいられない」そう思った彼は、慌ててヤマグチと名乗る男に電話しました。

 

「ヤマグチさん!どうなってんですか? 俺もう、ヤバイっすよ! 他の人、今までどうしてたんですか?」

「それが・・・みんな日当も受け取らないで途中でいなくなってるんですよね。・・・」

「え?」

「いや、こちらから電話するとつながらないんですよ。前に一人だけ、電話に出てくれた人がいましたがね・・・」

「・・・いたけど?」

「そのことは話したくないってきられてしまいまして、、、」

「なんすか、それ。もうやばいっすよ。無理っす。帰ります!」

「Y君、もうちょっと頑張れないですか?あと一日だけ、バイト代弾むから…。」

「・・・すみません・・・絶対無理です・・・」

 

彼はそう言って電話を切り、キャリーバッグも冷蔵庫の中の物も、置きっぱなしにして、その家から逃げ出したんだそうです。

 

後日、ふと気になって、例の「闇バイト」と検索してみると、彼が応募した内容がそのまま残っていて、その下に同じような募集要項があったそうです。それを見て、彼は再びぞっとしたそうです。


ヤマグチは「みんな最後の1日を残して、必ず逃げる」と知っていたこといたんでしょう。逃げてしまえば、高い報酬は払わずに済みます。

 

そして、自分は完全にヤマグチに騙されていたことに気が付いたのだそうです。

 

単価の高いバイトには、それ相応の対価がついて回るものです。楽して儲かる・・・ そんなおいしい話はありません。

 

そんな人間の欲をうまくついた怖い話を、聞かせてもらいました。もしバイトを探すならくれぐれも適正価格で探しましょう。