これは2週間前のお話です。
私はかつて通っていた小学校の同窓会に出席するため、久しぶりに田舎の町を訪れました。
懐かしい校舎は、木造建築特有の温かみを感じさせます。
しかし、その温かさと共に背筋をぞっとさせるような寒気が襲いました。
同窓会は和気あいあいと進み、私も当時の友人たちと懐かしい思い出話に花が咲かせていました。
しかし、ふと誰かが話題にしたのは、この校舎にまつわる怪談だったのです。
「ねえねえ、音楽室って今でも使われてないんだよね?」
「ああ、もう何年も誰も使ってないらしいよ。」
「昔、そこで首吊り自殺があったって聞いたんだけど…」
その話をきっかけに、参加者たちはそれぞれの体験談を語り始めました。
「夜中に校舎の窓から人影を見たことがある。」
「誰もいないはずなのに、音楽室からピアノの音が聞こえた。」
「職員室の机が、勝手に動き出したことがある。」
次第に、同窓会会場の空気が重く、冷たく感じられるようになっていきます。
「そういえば、あなたも何か体験したことがあるって聞いたんだけど…」
同級生の一人が、私に視線を向けます。
私は仕方なく、深呼吸をして、自身の体験談を語り始めたのです。
それは、私が小学6年生の時、夏休みのある日でした。
宿題を忘れて学校に取りに行った私は、誰もいないはずの校舎で、奇妙な現象を目撃します。
薄暗い廊下を、一人の少女がゆっくりと歩いていました。
白いワンピースを着たその少女は、まるで幽霊のように足音を立てずに移動しています。
私は、恐怖で体が硬直したまま、その少女を見つめていました。
少女は、音楽室の扉の前で立ち止まり、ゆっくりとドアノブを回します。
そして、静かにドアを開け、中へと消えていきました。
私は、恐怖に震えながら、音楽室の扉へと近づきます。
そして、恐る恐るドアノブを握り、ドアを開けました。
音楽室の中は、薄暗く、静まり返っていました。
ピアノの椅子には、誰も座っていませんでした。
恐る恐る奥へと進み、ピアノの鍵盤を見ました。
そこには、一列だけ、鍵盤が押し下げられた跡がありました。
まるで、誰かがそこに座って、一音だけ弾いたかのようでした。
私は背筋にぞっとするような寒気を感じながら、音楽室から逃げ出してしまいました。
そして、二度とあの場所には足を踏み入れることはありませんでした。
同窓会は、その後も怪談話で盛り上がり、夜が更けていきます。
しかし、私の心からは、あの日見た少女の記憶が消えることはありませんでした。
同窓会から数日後、私は再びあの小学校を訪れました。
そして、音楽室の扉を開け、あの日見た光景を確かめようとしました。
しかし、ピアノの鍵盤には、何も跡はありませんでした。
まるで、あの日の出来事が、夢だったかのように。
何も分からなくなった私はそのまま、校舎を後にしました。
しかし、あの日見た少女の記憶は、私の心から消えることはありませんでした。
木造校舎に潜む影。あれはいったい何だったのでしょうか?
その後、後者が取り壊され、今となっては確認のしようもありませんが、その後も心に永遠に残る謎となっているのです。
影の正体
あの日以来、私は少女の影に悩まされ続けています。
夜になると、夢の中に少女が現れ、私に何かを訴えようとしているような気がしました。
ある日私は図書館で古い資料を調べていた時に、一枚の紙切れを見つけました。
それは、戦時中にこの小学校で起きた悲劇に関する資料でした。
資料によると、当時この小学校には、戦災孤児となった少女たちが多くいました。
しかし、戦争が激化するにつれ、食料や生活物資が不足し、少女たちは過酷な生活を強いられていました。
そして、ある夜、少女たちは軍人によって校舎に閉じ込められ、火をつけられてしまいます。
少女たちは、逃げ場を失い、火の中で命を落としてしまったのです。
私は、資料の内容を読み、背筋にぞっとするような寒気を感じました。
あの日見た少女は、火事で亡くなった少女たちの霊だったのでしょうか?
私は、少女たちの供養のために、音楽室でピアノを弾くことにしました。
少女たちが好きだったという、あの日の一曲を。
ピアノの音色が、静かに校舎に響き渡ります。
すると、音楽室の扉が開き、少女の影が現れました。
少女は、私の演奏を静かに聞いていました。
そして、演奏が終わると、少女はゆっくりと私に近づいてきます。
私は、恐怖で体が震えながらも、少女に語りかけました。
「もう、苦しまなくていいんだよ。私たちは、あなたたちを忘れない。」
少女は、私の言葉に静かにうなずくと、光となって消えていきました。
それ以来、私が少女の影を見ることはありませんでした。
しかし、少女たちの存在は、私の心の中に永远に残っています。
私は、毎年命日の日に、少女たちの供養のために音楽室でピアノを弾いています。そして、少女たちの悲劇が二度と繰り返されないことを、心から願っています。
後日談
数年後、再びあの小学校を訪れました。校舎は老朽化のため、取り壊されることになっていました。
私は、取り壊される前にもう一度音楽室を訪れました。
そして、ピアノの前に座り、少女たちの好きだったあの曲を弾きました。
ピアノの音色が、静かに校舎に響き渡ります。
すると、音楽室の扉が開き、光が差し込んできたのです。
私は、光の中に少女たちの姿を見ました。
少女たちは、私に微笑みながら、手を振っていました。
私は、彼女たちと別れを告げ、音楽室を後にしました。
そして、取り壊される校舎を見送りました。
木造校舎は、少女たちの記憶と共に、消えていきました。
しかし、私の心の中には彼女たちのことは永远に残ることとなりました。